はじめに

2024年7月に公表された総務省「令和6年版情報通信白書」が、日本企業の生成AI活用について数字を明らかにしました。企業における生成AI活用方針の策定率はわずか42.7%。これは米国、ドイツ、中国の90%以上と比較すると約半分という水準です。

一方で、興味深いことに「約75%の企業が"業務効率化や人員不足の解消につながると思う"(「そう思う」と「どちらかというとそう思う」の合計)と生成AIの効果を期待しています。この数字のギャップが示すものは何でしょうか。

カスタマーサクセスとして日々多くの企業様とお話しする中で、この調査結果には深く納得するところがあります。本記事では、総務省の最新データと現場で感じる実感を組み合わせながら、日本企業の生成AI活用の現状と今後への示唆を探ってみたいと思います。

目次

1. 総務省調査で判明:日本企業のAI活用は世界の半分

1-1. 活用方針策定42.7% vs 海外90%の現実

総務省の国際比較調査によると、生成AIの活用方針を定めている日本企業は42.7%にとどまっています。この数字は「積極的に活用する方針である」と「活用する領域を限定して利用する方針である」を合計したものです。

対して、海外企業の状況は大きく異なります。

実際の業務での活用状況を見ると、この差はさらに明確になります。「メールや議事録、資料作成等の補助」での生成AI利用について、日本企業で「業務で使用中」と回答したのは46.8%でした。一方、米国・ドイツ・中国では「トライアル中」を含めると約90%の企業が何らかの形で生成AIを活用しています。

出典:総務省|令和6年版 情報通信白書|企業向けアンケート

特集② 第5章 第1節 1-(2) 企業向けアンケート

図表: 図表Ⅰ-5-1-4 生成AIの活用方針策定状況

カスタマーサクセスの現場でも、この温度差を強く感じます。海外の事例や競合他社の動向を気にされるお客様は多いものの、「まずは様子を見たい」「他社の成功事例が出てから」というご相談があるのも実情です。

特に日本企業の場合、「社内向け業務から慎重な導入が進められている」という調査結果通り、いきなり顧客対応に生成AIを導入するのではなく、まずは内部業務での検証から始める傾向が顕著です。これは日本企業のリスク管理意識の表れでもあり、決してネガティブなことばかりではありません。

1-2. でも75%が効果を期待という矛盾

ここで興味深いのが、活用方針の策定率は42.7%と低いにも関わらず、約75%の企業が「業務効率化や人員不足の解消につながると思う」と生成AIの効果を期待していることです。